俳句の風景

            宇 咲 冬 男

枯れてゆく芹深みゆく一つの瀬

冬の雨枯れ色の目にたまりゆく

寒菊や夜は失なふ影を曳き

冬蝶は石のぬくみを知らざりき

梟のかつて聴かざる憤り

寒鴉遠嶺へあづく野の光り

極月やそれでなくとも暗む谷

(句集『乾坤』より)