私の一句
戸田 徳子
走り根に千代の滴り鞍馬山 徳子
社宅時代の友人とあちこち旅していた頃の懐かしく好きな一句である。初夏京都駅で落合い叡山線で鞍馬山へ。鬱蒼とした杉木立には霊気さえ漂う。鞍馬山の固い岩盤に阻まれ杉や松の木の根は地中に入りきれず地表を縦横に走っている。この景観を俳人は「走り根」と表現したようだ。本来「走り根」は盆栽用語である。幾星霜絶えることの無い山の滴りの恵みで、杉や松の根が絡み合い地を掴まんばかりの様に圧倒された。この地で義経は大天狗の下学問武芸に励んだとの伝説、かの壇の裏合戦での八艘飛びの原点かもしれない。美術専攻の彼女は美術館や窯等に度々誘ってくれ鈍い感性の私をそっと後押ししてくれた。