俳句の風景

            宇 咲 冬 男

室生寺へ澄み濃き川に目を浄め

室生寺 六句

ひとを先に行かせ暮秋のよろい坂

しゃくなげ

秋を咲く石楠花に塔やさしかり

もみづるやみやびし塔の朱の照りに

秋の如来の裳裾の渦紋鋭かり

階登り切って御堂に澄む秋気

つるべ落し室生寺下る女(ひと)の肩に

(句集『乾坤』より)