ミニエッセイ -思うがまま-
わが師の恩 |
小泉富美子 |
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高校三年の担任の先生がご健在である。 定年後私はこの先生のいわゆる「おっかけ」をしていた。東陽町のカルチャー教室で「万葉集」「今昔物語」「百人一首」と学んでいた。ところがコロナ禍で終了。同じく立川で「源氏物語」。ここもコロナ禍で終了。 残念と思っていたところ先生のお宅を教場に卒業生限定で再開。「枕草子」「平家物語」「源氏物語」と現在も学んでいる。 十七歳年上の先生の明快な講義に聞き惚れている。古典を学ぶだけにとどまらず休憩時には人生相談、健康相談等々。これまでも今も「わが師の恩」をかみしめて、幸せである。また、交友関係も広がり二重の幸せである。 |
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犬の心 |
小岩 秀子 |
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今年の元旦は、息子の家族四人と、犬二匹、そして私共二人で元気に新年を迎えました。 例年通り近所の大橋まで日の出を見に出かけました。ちょっぴり雲はありましたが刻と共に輝きを増し、ひたに新年の太陽に感動一途を覚えました。「おゝばんざい」と人々の声、犬は何のことやらと、そわそわ、その時です。犬を扱いなれない私が、犬の首輪のロープを放してしまったのです。二匹共です。大騒ぎになりました。皆さん懸命に追いかけ探してくれました、車でも。一時間ほどかゝりましたが、まるで観念したかの様子で尻尾を振りつゝ首輪に治ってくれました。本当に皆さんに感謝でいっぱいでした。 |
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ごきぶり退治 |
設楽千恵子 |
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先月九十才の友人が怪我をして、四ヶ月間の入院をしているとの電話に驚いた。なんと怪我の原因は「ごきぶり退治」でした。一人で居間に出て来た大きなごきぶりを玄関にあった杖の先で殺そうとして、的が外れ、自身が転んでしまい、テレビ台に頭部をぶつけて気を失ない、救急車で病院に行き、左手の手術を受けたとのこと、未だに手の痛みが取れないそうです。彼女は去年「卆寿」という立派な句集を上梓されたばかりでした。一匹のごきぶりの為に作句の意欲を持ち去られてしまったと嘆いて居りますが、人ごとでは無く、こんな所にも危険が隠れているものと痛感した此の頃です。 |
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歩ける喜び |
須賀 経子 |
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午後の強い日差しを除け乍ら歩く楽しみを続けていた八月下旬、突然歩行困難になり、全く何の前兆もなかった事など思いめぐらしていた所に顔見知りの奥様に扶けて頂き自宅に戻ることが出来た。 翌日整形受診、紹介状を戴き、娘を呼び寄せ、20K離れた群馬県の病院受診となった。入院案内では、術後のリハビリ、入浴、コルセット着装等々吾が事乍ら理解は難しく全てを付添ってくれる娘に委ね、麻酔から覚めた後は回診で主治医の優しい言葉を聞き早くも気分は歩行の出来ることの喜びに。厳しいリハビリを続けて現在のあることに感謝し歩数を重ねている。 |
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「日本最古の道」を歩く |
清水 將世 |
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JR万葉まほろば線天理駅から桜井駅の間、奈良盆地東端約20㎞超の山際の古道である「山の辺の道南コース」。神社、寺院、廃寺、古墳、御陵そして柿本人麻呂などの万葉歌碑が点在し、関東の散歩コースとは全く異なる雰囲気。縄文、弥生に源を持ち、ヤマト王権という国家誕生の舞台にもなった地であればいかにもと思われる。高台からは大阪との境をなす生駒山、二上山、また大和三山などが遠望できる。道筋には地元農家の野菜、果物等の無人販売所も点在し、みかん、干し柿、コーヒーなどを楽しむ道草の道でもあった。12月とは思えない暖かさの中、並走する山々の紅葉も愛でることができたのは望外の喜びであった。 |
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思考の新陳代謝 |
白根 順子 |
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今年の生活目標として断捨離の実践がある。充実しているように思っていた予定表が俄かに人生の酸欠状態に見えてきた。枯木も山の賑わいと出かけていた所は一歩引いて空けておこうと考えている。無理して叫ばなくても物事は静かに進んでいく。自然の波紋に身を委ねよう、そして新しい場所を追い求めるよりも、今の居場所を豊かに育てようと思う。 体力や知的機能よりも感情機能の方が先に衰えると言われている。不安な思い込みより自分にとって大切な観念を意図的に取り上げようと思う。断捨離とは捨てることがその目的ではなく、空間を蘇らせることと会得した。まず書類整理から始めよう |
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