ミニエッセイ -思ううがまま-
しもつかれ |
江森京香 |
栃木に古くから伝わる破魔招福の祈りを込めたしもつかれは、大根・人参・酒粕・油揚・大豆・鮭の頭などで煮て作ります。昔は初午の時期に作られて神様に供えものとし、普段は作らずにいましたが現在は各家庭で「七軒のしもつかれを食べると病気にならない」と言われるようになりました。栃木の小山市へ引越し四年間暮らしている時、土地の人からしもつかれを教わりその美味しさに惹かれ、今では二月になると作らずにはいられなくなり、鬼おろしで大根一本をおろし、一日中かけて鍋一杯のしもつかれ作りが年中行事となりました。県内ではイベントも開かれ、味くらべなど郷土料理の伝承を行っております。 |
自然災害 |
越智みよ子 |
近年、地球上では色々な自然災害が起きている、到る所で大規模な山火事、豪雨そして土砂崩れ等々。昨年の六月二日、吾が町でも突然の降雹。五百円玉程もある大粒の雹が三十分間も降り続いた。成すすべも無い。 小麦の種子を生産しているこの町は、収穫直前の小麦をあっという間に叩き落とされた。農家の方々の嘆きはいかばかりか‼ そして吾が家でも幼い子供達が楽しみにしていた熟し始めたばかりのブルーベリー、まだ青い柿、キウイ等すべて叩き落とされ、庭は青葉と小さな実、大粒の雹がうず高く積って。災害は忘れた頃にやって来る、そしてどこにでも来る時代なのかも知れない。 |
母のひとこと |
角田 双柿 |
「肩を冷やすと風邪引くぞ」とは、寝乱れた私の布団を掛け直しながら母がその都度諭すように発していた言葉である。今では、新型コロナの感染予防の為に私が呪文のように唱えている。就寝時には、母のひとことと共に「頭寒足熱」を念頭に就寝環境の整備をはかっている。万病の元と言われる冷えの日中対策には、NHKの朝のテレビ体操と健康長寿のための散歩は欠かさず実施している。運動や食事は無理をせず"ほどほどに"をモットーに、散歩は俳句を作りながら、食事は体を冷やす食材は避けるよう注意しているが、旬の野菜や果物は、季節の移り変りを噛みしめるよう賞味して楽しんでいる。 |
今、目が離せない人 |
川上 綾子 |
ヤマザキマリさんです。ヤマザキさんは、山下達郎さんの音楽がお好きだそうです。その山下さんから新しいアルバムのために、肖像画を依頼されました。造形大学には、志の輔さん、勘十郎さんと三人の肖像画が展示されました。その傍らに書かれていた、博覧強記な人間は数あれどヤマザキマリさんは、別格と申し上げたい、と私はこの「博覧強記」とゆう活字を初めて目にしました。早速広辞苑を開くと広く古今東西の書物をよく覚えていること、記憶にすぐれた知識豊かな場合に用いられる、とありました。放送の対談等を見聞きして居ると豊かな知識、体験に裏付けされた話題に引き込まれてしまうのでした。 |
ある人が語った言葉 |
河野 桂華 |
「うまくいったら他人のおかげ、失敗したら自分のせい」と、ある人が語った言葉に悩んだ。よく分からなかった私は形から入り人に「ありがとうございます」を繰り返した。そのうちに、人の善意で物事が上手く流れ、自分自身の意識も良ければなお良き結果になると気づいた。人間は、無意識に何かのせいにして物事を結論つけたがる癖があることに気づき、いろいろな事に感謝できるようになった。失敗と思う事も結局全て体験したことは意味があり、無駄な事はないと思う私がいる。自分の機嫌くらい自分でとりたい。私に教えて下さったある人に感謝。 |
梅に想う |
小泉富美子 |
朝散歩途上の家の梅が一輪ほころんだ。胸が弾んだ。梅一輪一輪ほどの暖かさの句が思い起こされた。この句を覚えたのは小学校六年。もう六十年も経つのだ。この句に限らないが、その意味するところを実感するのには時日が必要だった。桜とは異なり、長い時間をかけて満開になる梅。年を重ねるに従い、愛おしくなってきた。句のもつ力を感じる。 私も教員時代、暗唱を課題としてきた。中には必要ないと反発する生徒もいた。納得させようと努めたがあまり功を奏したとは言えない。覚えた生徒たちは人生の途上で思い出すことがあるのだろうか。今度会うことがあれば聞いてみよう。楽しみが一つ増えた。 |