あした ネット句会
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兼題「片蔭」 投稿者:宗匠 投稿日:2018/07/16(Mon) 13:10 No.7576  
お待たせしました。暑中お見舞い申し上げます。
新たな兼題を「片蔭」とします。傍題には「片かげり」「片蔭道」があります。強い日差しの夏の昼間の道や家々の横には、その強い光が作る蔭がくっきりとしていて、その場所は暑さを回避する場所として、そこで一休みしたり、そこを伝って歩こうとします。視覚的には真っ暗な闇のようにも見える片蔭、そこだけは炎暑を避け得るほっとした場所となる「片蔭」を詠んでください。引き続きお一人3句の限定はお守りください。


兼題「蛍」の講評 投稿者:宗匠 投稿日:2018/07/14(Sat) 07:49 No.7574  
兼題「蛍」には70句の投句をいただきました。選者としては有り難い数で前向きに取り込めます。ありがとうございました。今回の兼題は意外にも難しかったようで入選以上の句が3割以下と絞られました。蛍から連想することが余りにも多かったのかとも思います。宗匠選と講評をさせていただきます。

□宗匠選と講評

(予選)
1.螢湧くこの世に入って来るように  小倖 →「〜入って来るように」は説明し過ぎで散文になりました。
2.蛍舞ふあの時君と見た場所で  樹雨  →場所の特定をしないほうが良いです。「蛍舞ふ君と見つめたあの日々へ」 
3.蛍来い駆けたあの子はいくつじゃった 比良山 →下五は素直に「〜いま幾つ」とすべきです。
4.蛍見のスマホのフラッシュ叱られて  比良山 →詩的ではないと思います。 
5.母の待つ知覧を目指す蛍かな  さかえ →「母の待つ知覧目指すや朝蛍」
6.湖の底はかつて杣道蛍飛ぶ  さかえ →上五を「湖の底を」と字余りにする理由が疑問。「杣道でありし湖底へ蛍飛ぶ」 
7.蛍火の夢の中まで舞ひにけり  樹雨  →言い過ぎです。「夢にまで舞ひて誘えり蛍の夜」
8.深閑の闇を動かす蛍かな  郁文   →平板です。思い切って「冥界の闇へ導く蛍かな」 
9.膨張の宇宙のごとく散る蛍  郁文   →「膨張の宇宙の涯へ散る蛍」
10.甘泉やホタルを誘う別荘地   郁文  →「や」ではなく「の」が良いと思います。
11.目の届く限り火の有る蛍かな  小倖   →上五、中七が説明的です。かつ意味も良く分かりません。
12.夕星や蛍の恋の始まれり  俳徊人 →「夕星や蛍は恋の火をともし」
13.息ひそめ待つ川縁や蛍の夜  俳徊人 →平板であると思います。
14.せせらぎに咲きたるような蛍かな  コタロー→蛍に花の喩えは相応しくないと思いました。
15.弟と蛍を追った昭和かな  コタロー→文語の方が締まります。「弟と蛍を追った昭和かな」
16.広島の鎮魂のごと蛍舞ふ  コタロー→「広島の鎮魂の火や蛍舞ふ」
17.声高な異国語の飛ぶ蛍狩  みなと → 「飛ぶ」→「交じる」飛ぶのは蛍です。
18.草蛍押し静づまれる豚舎かな   みなと →動きます。また何故豚舎かという疑問も。
19.蛍飛ぶ残像をまた見てをりぬ   みなと →「目裏(まなうら)に残像まざと飛ぶ蛍」   
20.手を丸め幼子蛍を捕へけり  川端  →「蛍渡す幼なく丸き掌へ」
21.蛍狩り重なる闇に聞くしらべ  川端  →「聞くしらべ」が唐突。であり蛍に聴覚は余り付きません。
22.樹樹の闇幻のごと蛍舞ふ  川端  →平板です。
23.揺蕩うとワルツに合わせ舞う蛍  まこと →「揺蕩う(たゆとう)」とは良い言葉です。「揺蕩いつワルツのごとく舞う蛍」
24.瀬々らぎの音も消えゆく散る蛍  まこと →「音も消えゆく」は無理があります。
25.初蛍少年の日を思ひ出し  明人  →動きますし平板です。
26.ゆふらりと蛍余生を迷ふらむ  明人  →「ゆふらりと蛍余生を迷ふかに」
27.蛍火やまた重ねたる不実かな  明人  →ちょっと付かないかと。「蛍火の咎むや重ねたる不実」
28.少年の嗚咽なぐさむ蛍籠  久米斗三→何故少年が嗚咽するのでしょうか?
29.墓原の蛍遊泳魂和む  久米斗三→詰め込みすぎです。「墓原に遊べる魂か飛ぶ蛍」
30.藪原の闇に蛍火ただ呼ばふ  久米斗三→「藪原の闇」が生かされていません。
31.蛍舞ふ以外の景は闇に消し  暁   →惜しいです。「蛍舞ふ全ての音を闇に消し」であれば秀逸でした。
32.瀬の音を闇に聞くなり初蛍  暁   →音を「聞く」は不要。「瀬の音の闇に高まり初蛍」
33.静寂に光跡紡ぐ大蛍  本松天道→これも惜しい。「静寂の光を紡ぐ大蛍」
34.雨蛍闇夜を飾る星となり  本松天道→「雨蛍闇夜彩る星となり」 
35.蛍火やにわかに動く鐘の音  祥風  →蛍が一番出やすいのは7時か8時。その時間に鐘は鳴らないのでは?
36.蛍火を点しとされよ渡り川  みさ  →「渡り川」が不用意でした
37.手のひらの蛍を放つでくのぼう  ぐずみ →動きます。
38.ふる里の灯りも遠し初蛍  穣一  →「ふる里の遠き灯りや初蛍」
39.初蛍恋の行へを占へり  穣一  →ちょっと平板です。「行へ」は「行方」の方が良いと思います。
40.蛍狩り空に伸びたる手をのがれ  穣一  →主語が2つに。蛍狩りは人間、手を逃れるのは蛍。
41.寝ころんで遥か蛍の羽音聴く  ウサギ →それほどの羽音がするものでしょうか?
42.虫かごで思案するかや昼ボタル もも一号→もう一歩です。
43.始まりは幼なじみの蛍の夜  未音  →「の」が様々に解釈ができるためむしろ邪魔「始まりは幼友達蛍の夜」
44.横顔をそつと見つめる蛍狩  未音  →動きます。
45.街の灯を恋ふる娘渓に散る蛍  ぐずみ →配役が多く目移りします。
46.屋久島の蛍火夢の続きかな  ウサギ →「屋久島の蛍火夢の続きとし」
47.ほうたるの血をつなぎゆく里であり  ぐずみ →蛍は虫で血はありません。もっと素直に「蛍火を受け継ぐ里に飛ぶ蛍」
48.子別れの蛍の落とす涙かな  ウサギ →「子別れの涙か蛍闇濡らし」
49.叡山の法灯に来て迷ふ螢  一二三 →中七「て」留めで、かつ下五を字余りにする理由が分かりません。
50.昼寝覚遥か蛍雪と言ふ時代  瞳人  →意味がつかめませんでした。

(入選)
1.愛と死の言葉やさしく蛍の夜  太朗 →愛する人の口から死の言葉を引出してしまう蛍の夜が詠まれています。
2.蛍にもあらむ充電ステーション  比良山 →こういう発想は俳諧味があって良いです。
3.蛍火の黄泉はこちらと告げるかに  影法師 →ちょっと説明的ですが、蛍を擬人化したまずますの句です。
4.時貞の一揆の址や蛍飛ぶ  さかえ →魂の存在を伺わせる具体的な句です。
5.百選の水ぞほうたる蛍来い  俳徊人 →美しい水なのでしょう。
6.君の手を握り返せし蛍の夜  樹雨   →言葉の要らない情景が蛍に合っています。 
7.短命の定め贖う朝蛍  まこと →短い命の蛍が朝もかすかに光っている様が切なさを感じさせます。
8.明滅のいよよ激しき恋蛍  暁   →蛍合戦という季語もあるように、蛍も命を賭ける場面があります。
9.深闇に刹那の歓喜飛ぶ蛍  本松天道→まずまずの仕上がりかと思います。
10.闇の夜の遊び上手な蛍かな  祥風  →これも俳諧味のある句です。
11.ほうたるや飛び交う奥に忘れ水  祥風  →蛍に水は付き物ですが、「忘れ水」が生きています。
12.夕蛍崩し書きなる一行詩  みさ  →飛ぶ蛍の残像が一筆書きを思わせます。
13.火加減は蛍火程と母の伝 もも一号→面白い発想です。
14.蛍火や付いておいでと言ふやうに  いつせ →素直で良いと思いました。
15.生ぬるき水の匂ひやほたるの夜  いつせ →嗅覚を持ち出したのはお手柄です。実感があります。
16.銘仙の半幅帯や蛍の夜  桐華  →粋な半幅帯を締めて誰と見る蛍でしょうか?

(秀逸)
1.あわあわとこの世あの世をゆく螢  小倖  
  →蛍の舞う闇を眺めていると自分の居る場所がどこなのかわからなくなる時があります。「あわあわと」の斡旋が、ひょっとして自分のいる場所があの世かも知れないと思わせています。

2.ほうたるの寄りくる一つ母かとも  みさ  
  →蛍を人の魂や亡くなった人に喩える句は数多あります。しかしそれを漠然と表現すると陳腐なものになりますが、こうしてそばに寄ってきた蛍を亡くなった母ではないかと思うことで、母の記憶がまざまざと蘇る句になっています。

3.散る蛍親しき人がまた一人 もも一号
  →飛んできた蛍がふっと消えた瞬間を詠んでいます。消えたのは身近な人の魂にほかならないと作者は思っています。こうして「蛍=人の魂」という等式を具体的に表現することで、本当に蛍は人の魂かも知れないと思わせることが出来ます。

以上で70句の講評を終えます。
新たな兼題はまた後ほど、
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