あした ネット句会
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兼題「枯野」 投稿者:宗匠 投稿日:2025/11/15(Sat) 08:18 No.12603  
新たな兼題を「枯野」とします。三冬の地理に分類される季語です。草木の枯れた茫漠とした冬の野原を指します。傍題には「枯原」「朽ち原」「野の枯れ」「枯野道」「枯野原」「大枯野」などがあります。ただ単に草木の枯れた野原を詠むのでは能がありませんし、読者の琴線にも触れられません。この枯野から何かを引き出すような作句をしてみてください。今回の締切は12月5日辺りを予定しております。お一人3句までのルールをお守りいただき奮ってご投句ください。



Re: 兼題「枯野」 膝痛 - 2025/11/15(Sat) 20:38 No.12604  

廃線路栄華滅びて枯野なり


Re: 兼題「枯野」 コタロー - 2025/11/17(Mon) 19:19 No.12605  

枯野原瞬く星も無かりけり
死に処探す猫をり大枯野
芭蕉翁追ふ心病みつつゆく枯野


Re: 兼題「枯野」 影法師 - 2025/11/18(Tue) 06:58 No.12606  

枯野行く無頼の血潮滾らせて

兼題「秋刀魚」で秀逸にお選びいただき有難うございました。


兼題「秋刀魚」の講評 投稿者:宗匠 投稿日:2025/11/14(Fri) 10:56 No.12602  
兼題「秋刀魚」に89句目もの投句をいただき有難うございました。今回の兼題は今や庶民的とも言えなくなった「秋刀魚」ですが、投句の中には秋刀魚以外の魚でも詠めるような内容のものがかなり見受けられました。そのような句に対しては「季語が動く」という表現で講評をしています。今回、「動く」とした判断基準は、詠んでいる内容によって対象が「秋刀魚」と特定できるかどうかですが、その判断は極めて微妙であり、最終的には選者である私の独断と偏見と言われても致し方のない判定にて行っております。従いまして、皆さんの中にはご反論やご異論を持たれる方も多いのではないかと推測しております。そのようなない交ぜなものを含んだ講評であることうぃおお含みおきください。では宗匠選と講評を書かせていただきます。

□宗匠選と講評
(予選)
1.大谷に匂い届けと秋刀魚焼く  膝痛 →秋刀魚と大谷選手との取り合わせは唐突で必然性が無いと思います。
2.黒潮に光る銀色秋刀魚来る  郁文 →まずまずです。
3.根室沖入港絶えぬ秋刀魚船  郁文 →これもまずまずです。
4.秋刀魚刺し地の利感謝と杯重ね  膝痛 →作者は秋刀魚の水揚げ地にいるのでしょうか?
5.黒潮蛇行終息豊漁秋刀魚  膝痛 →表現に無理があります。「気まぐれな黒潮運ぶ秋刀魚かな」
6.うらがへし又うらがへし秋刀魚焼く  ののはな→まずまずです。
7.一匹のさんま焼てふ独居かな  ののはな→「独り居や一匹のみの秋刀魚焼き」
8.足取りの軽く帰れば初秋刀魚  詩雨 →「足取りの軽き家路や初秋刀魚」
9.初さんま売るは名のみの隠れ塩  瞳人 →ちょっと意味を掴みかねています。
10.盛り上がる秋刀魚の漁や銚子沖  みさ →他の魚でも詠めます。銚子港はむしろアジやサバの方が有名です。
11.特売の秋刀魚に並ぶ朝の市  みさ →季語が動きます。これも他の魚で詠めます
12.酒焼けの塩辛声や秋刀魚競る  ののはな→季語が動きます。これも他の魚で詠めます
13.豊漁は久方ぶりの初秋刀魚  ゆき →季語が動きます。これも他の魚で詠めます
14.水揚げの秋刀魚に沸ける漁師町  ゆき →季語が動きます。
15.店先の焼きたて秋刀魚よく売れて  ゆき →店先で秋刀魚を焼いて出す店はあっても売る店はほぼないと思います。
16.秋刀魚焼き皆で食べる美味しけり  川口あおい→季語が動きます。
17.真相は分かり難しや秋刀魚の眼  みぃすてぃ→ちょっと意味が掴みかねました。
18.船傾げ網引き上げる秋刀魚漁  しーしー→季語が動きます。
19.マーケット台車に山と秋刀魚積み  しーしー→季語が動きます。
20.秋刀魚焼く風の夕ぐれ消防署  ひろ志 →変消防署でも焼いているという点では悪くありません。
21.餌喰い良き水族館の青さんま  ひろ志 →季語が動きます。  
22.卓上の秋刀魚比べて大きな方  向田敏 →これも季語が動きます。
23.秋刀魚の背フォークとナイフの見事かな 向田敏→「秋刀魚の背フォークとナイフのごと光り」
24.海泳ぐ秋刀魚の群れの一匹よ  向田敏 →季語が動きますし、意味も今一つ分かりません。
25.秋刀魚さんま皿をはみ出してる勇気  荒 一葉→「勇気」?自然の「恵み」としてはいかがでしょうか?
26.大煙香る秋刀魚の尾は尽きる  6105→「尾は尽きる」が理解できませんでした。
27.秋刀魚焼く一尾は友へお裾分け  光雲2  →友はご近所にいるのでしょうか?
28.秋刀魚跳ね舳先へ漁夫の笑み零る  光雲2 →季語が動きます。
29.スーパーのトロ箱デンと秋刀魚かな  せつこ →季語が動きます。他の魚でも詠めます。
30.マニュキアの指でさばいて秋刀魚かな かくた まき→これも季語が動きます。
31.北海に変幻自在の秋刀魚群れ  川端  →季語が動きます。むしろ鰊?
32.赤提灯秋刀魚で一献路地の店  川端  →三段切れです。
33.秋刀魚買ふ嘴と目を確かめて  風神  →嘴は鳥に使う言葉では?
34.トロ箱にひかりの並ぶ秋刀魚かな  風神  →少し季語が動くかと思います。
35.大皿に秋刀魚を寝かせこの夕餉  凡愚痴歌→季語が動きます。
36.目の前の秋刀魚の一尾大漁旗  凡愚痴歌→明確にA=Bとすべき。「目の前の秋刀魚一尾は大漁旗」
37.白飯の秋刀魚一匹ご馳走に  リタイア→「の」ではなく「に」かと
38.デパ地下の「おひとり様」の秋刀魚買ふ 萌  →季語が動きます。   
39.靴裏を濡らして路地に秋刀魚買ふ  鈍愚狸 →今一つです。
40.鮮やかに輝く秋刀魚河岸の網  穣一  →河岸に網はあるのでしょうか?
41.秋刀魚焼く煙無く寂しIH  穣一  →ちょっと無理な物言いかと思います。
42.初物の高い割には痩せ秋刀魚  俳徊人 →散文で説明的と思います。
43.待ちきれぬ子供らなだめ秋刀魚焼く  さかえ →説明的で散文です。「秋刀魚焼く待ちきれぬ子等なだめつつ」
44.骨も焼きサブリメントの秋刀魚かな  さかえ →「骨も焼きサブリメントとする秋刀魚」
45.告別の文を暗誦秋刀魚焼く  悠太  →意味が掴めませんでした。
46.しばらくは吾を見詰むる秋刀魚の眼  悠太  →季語が動きます。
47.日の暮や秋刀魚の匂ふ書斎部屋  山葡萄 →書斎部屋? 「日の暮や秋刀魚の匂ふ書斎にも」
48.目の黒いうちに買つてと秋刀魚かな  桉音  →「目の黒いうちに買つてと言う秋刀魚」
49.黙々と秋刀魚の臓(わた)を喰んでをる 桉音  →「秋刀魚の臓(わた)ただ黙々と喰んでをり」

(入選)
1.先ず造り後に焼き立て我が秋刀魚  郁文 →味わい方が具体的で、季語を活かしています。
2.初さんまの我が家三ツ星レストラン  達三 →庶民の矜持が見えます。
3.煙いし露地の記憶や秋刀魚食む  太朗 →季語が動きません。
4.ぬる酒と秋刀魚と古き女房と  瞳人 →良いのですが、「ぬる酒」はいささか秋の季語めいてはいます。
5.献立のいらぬ暮しや秋刀魚焼く  みさ →秋刀魚一択という意味と捉えました。
6.焼き秋刀魚白き眼も抉りけり  コタロー→目までも美味しいと詠んでいます。
7.猫ならばどれを選るのか初さんま  コタロー→これも初秋刀魚で季語が定まりました。
8.空のあを海の碧見て秋刀魚喰ふ  コタロー→秋刀魚からの離し方が良いです。
9.さんま焼く父の帰りを待つ夕べ  みぃすてぃ→焼いて待つのは秋刀魚に合います。
10.あの頃は人多き街秋刀魚焼く  みぃすてぃ→「あの頃」は秋刀魚が安く、人も街にあふれていました。
11.焼秋刀魚小骨は飯とともに嚥む  しーしー→まずまずです。
12.活気づく銚子の漁港初さんま  ひろ志 →「初さんま」だから付く季語が動きません。
13.競り声のますます高し初秋刀魚  古人  →これも初秋刀魚の気持ちの高ぶりが読み取れます。
14.腸綿の煙恐ろし秋刀魚焼く  荒 一葉→秋刀魚ならではの表現です。
15.信長の貌して秋刀魚焼く日暮  杏だんて→きっと難しい顔なのでしょう。美味しいものなのに・・。
16.一献と秋刀魚の苦み腹に沁む  6105→苦みが酒に合います。
17.三枚に捌くきときと秋刀魚喰む  6105→「きときと」は「新鮮」を意味するの富山の方言
18.はらわたの苦き秋刀魚の炭火焼き  光雲2 →炭火焼であればなおさらでしょう。
19.秋刀魚焼く煙の中を友来たり  せつこ →庭なのでもうもうと煙をあげて焼くのはやはり秋刀魚です。
20.この寺に地獄窯あり秋刀魚焼く  せつこ →曰くのあるお寺でも秋刀魚を焼いていると詠んでいます。
21.寄席帰り秋刀魚ぶら下げ目黒駅  川端  →目黒が効きました。
22.昭和は遠し卓袱台に秋刀魚かな  風神  →卓袱台に秋刀魚で決まりです。
23.秋刀魚食む名もなくつましくつつがなく 凡愚痴歌→まさに庶民の魚であると詠んでいます。
24.七輪の秋刀魚誘う昭和へと  リタイア→かつてはどの家庭でも七輪で焼いていました。
25.今日も秋刀魚明日も秋刀魚の暮らし何時 萌  →何しろ安かったから・・。でしょう。 
26.伏す夫へ焦げ目やさしき初秋刀魚  萌   →焦げ目の優しさが身に沁みます。
27.ひとり居の秋刀魚一尾の煙かな  鈍愚狸 →言い古された表現ですが、そのペーソスは分かります。
28.二世帯の秋刀魚焼く庭子らの声  鈍愚狸 →大家族での秋刀魚の句です。
29.七輪で秋刀魚焼いたる昭和かな  穣一  →昭和という言葉がぴったりです。
30.震災の海より届き新秋刀魚  俳徊人 →東北から届いた秋刀魚でしょうか。
31.はらわたも味の1つや 焼秋刀魚  さかえ →秋刀魚は焼けばはらわたも美味です。 
32.陰膳の父と向かひて食む秋刀魚  悠太  →きっと亡くなった父の好物だったのでしょう。ドラマがあります。
33.黒の目を三つ並べて秋刀魚焼く    桉音  →細い秋刀魚は並べて焼けます。

(秀逸)
1.妻との夕餉秋刀魚の記憶語り合い  影法師
  →生まれも育ちも異なる夫婦の間には、庶民的と言われている秋刀魚に関してもまた、異なった思い出があるはずです。そんなそれぞれの秋刀魚にまつわる思い出を話しながらの夕餉が詠まれている句です。

2.秋刀魚焼く戦禍の国のニュース見つ  荒 一葉
  →厨房の向こうのTVの画面には無益な戦争の中で悲惨な境遇にある市民や難民の姿が映されています。そのこちら側には平和で豊かな日本の家庭があり、今が旬の秋刀魚が焼かれています。悲惨な戦争に対してどうすることもできないものの、せめてこの今の幸せに感謝する気持ちは持とうと思う庶民の視点で詠まれています。

3.秋刀魚食むノーベル賞の話して  杏だんて
  →この句の庶民の暮らしとは別の世界である世界的に認められたノーベル賞の受賞のことを、わがことのように喜んでいる庶民の暮らしが見える句です。このように異なる事象を対比させ、ぶつけ合うことで季語を際立たせるという手法が生きています。

4.秋刀魚食う頭は私は尾は夫  リタイア
  →秋刀魚のおいしい部位は頭の方で、尾の方はほぐしやすく食べやすいものの、おいしさでは一段落ちます。奥さん優位な家庭なのでしょうか。それともご主人は魚の食べ方が下手で、むしろ尾の方を好むのでしょうか。そんな夫婦間の微妙な機微が窺われる俳諧味のある句です。

5.二人いて欲しいものなし秋刀魚かな  かくた まき
  →人間の欲には際限がありませんんで、欲しいものは沢山あるはずです。しかしこの句は「欲しいものなし」と断定しています。この思い切りと断定が、このカップルの爽やかさ割り切った清々しさを感じさせます。それほどまでにサ秋刀魚がこの二人に口福をもたらしているという句であろうかと思いました。

6.トロ箱にしろがね美しき初秋刀魚  俳徊人 
  →秋刀魚の漢字は「秋の刀のような魚」と書きます。この文字からこの句は詠まれています。魚市場や魚屋さんのトロ箱に秋刀魚が切れ味の良い刀のようにシャキッと並んでいる様を詠みました。中七の「しろがね美しき」が秀逸です。

7.長皿をはみ出す頭初秋刀魚  山葡萄 
  →今年の秋刀魚は豊漁でしかも大ぶりのものが多いようです。焼き魚用の長方形のお皿を超えるような大きさの秋刀魚が焼かれて乘っているのでしょうか。上五を「長皿」としたことで、それをはみ出す秋刀魚の大きさが更に誇張されていて上手いと思いました。


以上で89句の講評を終えます。
新たな兼題はまた後程、


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