| 兼題「寒桜」の講評 投稿者:宗匠 投稿日:2026/01/29(Thu) 07:30 No.12716 | |
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 | 今回は少し締切が早かったこともあったのでしょうか、投句が少なかったものの、寒桜をしっかり見つめ、季語を活かした句が多かったように思います。秀逸の句も沢山出ました。秀逸に選ばれた句の他にも秀逸にしようかと迷った句が幾つもありました。嬉しい限りです。
□宗匠選と講評 (予選) 1.寒桜まだよりもうを意気地とし 達三 →良い句ですが、もう一歩 2.夕映えて薄紅の寒桜 ゆき →この句ももう一歩踏み込んで欲しいと思いました。 3.凛として空の青さや寒桜 ゆき →「寒桜空の青さへ凛として」 4.大吉の籤結ぶや寒桜 郁文 →中七が字足らず。「大吉の籤を結ぶや寒桜」 5.見て嬉し酒と縁なき寒桜 郁文 →ちょっとわかりにくい句です。 6.寒桜来てみんしゃいと届く文 光雲2 →南の地からの手紙でしょうか? 7.寝ころべば違ふ貌見せ寒桜 光雲2 →まだ寒いので「寝ころぶ」は付かないと思います。 8.一片の寒緋桜の水輪かな コタロー→他の花でも詠めるので、季語が動きます。 9.鐘の音に一枝揺るるや寒桜 みさ →「鐘の音に揺るる一枝(ひとえだ)寒桜」 10.ひとしきり泣いて見上げし寒桜 詩雨 →何故という疑問が残る句です。 11.寒桜紅の合間に鳥遊ぶ 広海 →まずまずです。 12.ひめくりは寒桜の香数えおり かくた まき→ちょっと無理な擬人化かと思います。 13.名にし負ふ伊豆は河津の寒桜 俳徊人 →いささか直球過ぎました。 14.人知れず咲いて散りゆく寒桜 俳徊人 →季語が動きます。桜でも他の花でも詠めます。 15.谷あいの里に一対寒桜 しーしー→余り季語を活かしていないと思います。 16.邑に入りしかと見上げる寒桜 しーしー→もう一歩です。 17.今年又力を貰ふ寒桜 いつせ →もう一歩踏み込むべきです。 18.寒桜谷の底には孤老の棲家 凡愚痴歌→下五を字余りにする必要があったのでしょうか? 19.寒桜折れし一花栞とし リタイア→もう一歩です。 20.息きらし山登りきて寒桜 川端 →「山登り」が夏の季語で、ちょっと季節的に無理があるかと。「丘」では? 21.土手飾る数千本の寒桜 川端 →季語が動きます。 22.冬桜飛脚は白き息を吐き 川端 →これも「息白し」という冬の季語があって、季重ねめいています。 23.寒桜膳に一花お食初め リタイア→主役が「お食い初め」になりました。 24.薄紅を零して散るや寒桜 風神 →寒桜はむしろ濃い紅色では? 25.能弁のあとの沈黙寒桜 風神 →季語が生きていません。 26.寒桜暫し眺めて妻に眼を 膝痛い →季語が動きます。 27.寒桜遣らずの雨の無情かな 膝痛い →この句はむしろ春に咲く桜の方に似合います 28.猫がじゃれ老妻小躍り寒桜 膝痛い →季語が生かされていないと思います。 29.夢多き受験の園の寒桜 穣一 →「受験」は仲春の季語で季違いになります。 30.戻れない庭の片すみ寒桜 杏だんて→上五の意味が分かりませんでした。 31.淡々と薄墨いろや寒桜 さかえ →寒桜の色はむしろ濃いめでは? 32.憩い場の誰にも優し緋寒桜 萌 →まずまず 33.寒桜淡いピンクの呼ぶ平和 6105→むしろ濃いのでは 34.寒桜粋な開花の清め酒 6105→もう一歩 35.寒桜能面浮かぶ聚楽壁 桉音 →いささか盛り込み過ぎで季語が生かされていない
(入選) 1.緋寒桜河津の川面ほころばせ 影法師 →緋寒桜の名所の地名を出して明るく詠みました。 2.川音を弾ませており寒桜 影法師 →季語が生きています。 3.海光や寒緋桜の黙深し ゆき →まだ寒い冬の海の光と寒桜の対比が良いです。 4.難病と永き付き合い寒桜 郁文 →ようやくという気持ちと負けてはならないという気持ちが出ています。 5.術後には笑顔で見たし寒桜 コタロー→この句は寒桜の情報を病室で聞いて思いを馳せた句と捉えました。 6.ひとり生く緋寒桜のいろに触れ コタロー→孤独な気持ちに寄りそうような緋寒桜であると詠んでいます。 7.美ら海の青の深みや緋寒桜 みさ →沖縄の寒桜のようです。海の色も寒桜の咲くころには変わるのでしょうか。 8.不忍の風を束ねて寒桜 みさ →東京・上野の寒桜でしょうか? 9.また一歩踏み出さんとや寒桜 広海 →良い句ですが「また一歩踏み出してみん寒桜」としてはどうでしょうか。 10.池かこむ緋寒桜の濃いつつみ しーしー→池の色も変わるほど、という句です。 11.明日への続く坂道冬桜 いつせ →平板ですが季語が生きています。 12.捨て切れぬ夢を育み寒桜 荒 一葉→この句も寒桜という季語をしっかりと睨んでいます。 13.忘れてはならぬ戦禍や寒桜 荒 一葉→厳冬の中の戦場に思いを馳せ、早く平和の花が咲くことを祈る句です。 14.先駆ける潔さこそ寒桜 凡愚痴歌→この句も季語を活かしています。 15.明日あるを内に信じて寒桜 凡愚痴歌→寒桜に自らの思いを重ねています。 16.心底に優しさ連れて寒桜 リタイア→季語が生きています。 17.ひそと咲きひそと散りたる寒桜 風神 →いささか山桜でも詠めそうな句ではありました。 18.寒桜仰ぎてひとつ歳重ね 穣一 →ちょっと季語が動きそうですが、まずまずの句です。 19.弱音吐く事もたまには寒桜 杏だんて→寒桜をしっかりと睨んでいます。 20.生え初めし乳歯ちらりと寒桜 さかえ →待ちに待った感のある吾子の乳歯と寒桜が付きます。 21.我が団地の和のシンボルや寒桜 萌 →どうして?と思う反面、断定されて納得性が高まった句です。 22. さぶる野や生きる先駆け寒桜 山葡萄 →いささか甘い表現ですが、季語が生きています。 23. 吹きさらす川辺賑はふ寒桜 山葡萄 →ぎりぎり冬の季語の季重ねをかわした句です。 24.河べりの遠目くれない寒桜 山葡萄 →寒桜の特徴をさらりと読みました。 25.還暦の生きる入院寒桜 6105→中七にドキッとしました。 26.寒桜粋な娘は痩せ我慢 桉音 →俳諧味があります。
(秀逸) 1.逆境もふわり笑顔の寒桜 太朗 →長く厳しい冬に耐えて早々と咲く寒桜の特徴を上手く詠みました。その寒桜に自分の境遇を重ね、その自分に寒桜がエールを送ってくれているように感じている句のように見受けました。 2.隠しもつ武士の遺伝子寒ざくら 光雲2 →「武士は食わねど高楊枝」という言葉があります。武士は空腹であってもそんな素振りを見せず、悠然と満腹であるかのように振る舞うという意味があります。そんなことをふと思わせる一句です。
3.寒桜眺むる君ぞ眩しけれ 広海 →兼題「寒桜」の投句の多くは寒桜を見据えた句でした。しかしこの句は寒桜を見ている相方を詠んでいます。寒桜は寒い中に一足早く咲いて人々の心を和ませてくれるものですが、その寒桜を見つけている貴方こそ私には嬉しく心強い存在であると詠んでいます。
4.ひそと咲く女人高野の寒桜 俳徊人 →女人高野と呼ばれる室生寺の寒桜を詠みました。女人禁制の多かった時代に、参拝を許された寺に身内の冥福を祈って参拝した女性たちを見て来た寒桜の知る過去が偲ばれる句です。
5.石の黙解きたる一枝寒桜 荒 一葉 →この石はフィジカルな岩石のみならず、旧弊に固執する人、制度、社会までも象徴していると受け止めました。そんな旧弊を寒桜が解き放っているようだと詠んでいます。
6.今年こそ思いを告げむ寒桜 穣一 →年年歳歳、時は巡って再び花が咲き鳥が鳴きます。寒桜はその先駆けであり、「今年こそ」と思わせる、と詠んでいます。自然の移ろいは、その自然と共に歩む人間に様々な示唆を与えます。作者の決心を引き出した寒桜の性情を活かした句であると思いました。
7.河津辺のあわてん坊の寒桜 萌 →俳句は「俳諧の連歌」=連句、の発句から生まれています。つまり俳句にはそのDNAに俳諧があります。時にはこんな俳諧味のある句も詠んでいただきたと思っています。
8.束の間の日に当たる頬寒桜 桉音 →寒桜は晩冬の季語であり、寒桜が咲くころはまだまだ寒い日が続いています。そんな寒の内の寒い中、束の間の日の光に感じた頬の温かさと寒桜の対比が上手いと思いました。
以上で69句の講評を終えます。 新たな兼題はまた後程、
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