あした ネット句会
[インターネット俳句トップに戻る] [使い方] [ワード検索] [過去ログ]

兼題「秋の灯」 投稿者:宗匠 投稿日:2025/09/15(Mon) 16:15 No.12504  
新たな兼題を「秋の灯」とします。秋の夜の燈火。春燈の艶やかな感じに対して、秋の燈火は透明感があって、遊びよりは学びの燈であり、「燈火親しむの候」と言えば、読書や学びに適した燈火を指します。傍題には「燈火親しむ」「秋燈(しゅうとう)(あきひ)」「燈火の秋」「秋ともし」などがあります。今回の締切は10月10日(金)頃とさせていただきます。お一人3句までのルールをお守りいただき投句してください。


Re: 兼題「秋の灯」 コタロー - 2025/09/16(Tue) 05:52 No.12505  

兼題「燕帰る」では秀逸の選及び丁寧な講評誠に有難う御座いました。

秋灯下いろはにほへとちりぬるを
秋灯下独り楽しむ詰将棋
燈火親しむ硬筆文字を書き連ね


兼題「帰る燕」の講評 投稿者:宗匠 投稿日:2025/09/15(Mon) 15:37 No.12503  
兼題「帰る燕」に74句の投句をいただき、有難うございました。帰る鳥は様々ですが、来るときも突然であると共に去る時も突然で、かつ南へ帰るという特徴のある「帰る燕」という兼題に対して様々な視点から句を詠んでいただきました。このように特徴のある「帰る燕」でしたが、他の渡り鳥とあまり変わらない取り扱いの句が多く、いささか残念ではありました。では宗匠選と講評をさせていただきます。

□宗匠選と講評
(予選)
1.子等育つ親子の別れ燕去る   郁文 →三段切れのようです。「燕去る親離れせし子等もまた」
2.温暖化早目の飛翔燕去る    郁文 →これも三段切れ。「温暖化に早まる旅や秋燕」
3.帰る燕家族が増えて楽し旅   膝痛 →「楽し旅」は言い過ぎです。「帰る燕増えし家族と諸共に」
4.燕帰る筑波の嶺のひかり浴び  ゆき →まずまずです。
5.遠き目で語る翁や秋燕     詩雨 →これもまずまず。但し秋燕以外の季語でも詠めそうで季語が動きます。
6.暁光の空を一閃秋つばめ    みさ →もう一歩です。
7.突堤にしぶく白波秋つばめ   みさ →まずまずです。
8.燕帰るうちは何者にもなれんかつた 凡愚痴歌→破調でなくても詠めます。「燕帰る何者にさえなれぬまま」
9.ふたりの食卓ひつそりと秋燕  凡愚痴歌→17音を超え、かつ中七も固まっておらず、破調の限界を超えています。せめて中七だけは作っておくべきです。「ふたりの食卓今朝ひっそりと秋燕」
10.土の巣に付きし羽毛や燕去る  古人 →「土の巣に残る羽毛や燕去る」
11.俳人は残る燕を見つめけり   コタロー→「俳人」が浮いているように感じました。
12.気配消し巣を去る燕風を待つ  コタロー→詰め込み過ぎです。
13.帰る燕隊列先頭いごっそう   膝痛 →三段切れです。  
14.ふるさとは思ひ出のなか秋燕  みぃすてぃ→平板です。
15.あかね雲曳きて燕の帰るかな  みぃすてぃ→もう一歩です。
16.帰る燕感謝を遺す燕の巣    膝痛 →「帰る燕感謝のしるし巣に残し」
17.燕去る軒に二代の巣が残る   しーしー→「燕去る軒に二代の巣を残し」
18.高速を帰る燕よ汝は南     しーしー→だからどうした、という声が聞かれそうです。
19.稜線を越ゆや子連れの秋燕   光雲2 →まずまずです。
20.見返りの坂で見送る帰燕かな  光雲2 →「見返りの坂見返らず秋燕」
21.山里の日落つはやさや秋燕   荒 一葉→季語の説明で終わっています。
22.帰燕の巣残せるままに家じまひ 荒 一葉→下五の「家じまひ」が蛇足かと思われます。
23.燕去る飛行機雲のすぐ消えて  いつせ →「燕去る飛行機雲の消えし跡」
24.良き日本惜しむかに帰燕舞ふ  萌   →「日の本を惜しむかに去る秋燕」
25.置き去りのビーチサンダル秋燕 山葡萄 →「ビーチサンダル」は「サンダル」と共に夏の季語になります。
26.ふるさとの野山ひつそり去ぬ燕 山葡萄 →平板です。
27.再来を願ひ見送る秋燕   俳徊人 →季語が動きます。
28.コンビニの営巣残し燕去ぬ   俳徊人 →意味が掴めませんでした。
29.富士を背にひと際高し秋燕   川端  →まずまずです。   
30.母逝きし故郷の空燕去る   川端  →これもまずまずです。   
31.本堂の軒の空き巣や去ぬ燕   耶麻  →「本堂の巣は空っぽに去ぬ燕」      
32.すれ違ふ市電の軋み帰燕かな  風神  →「軋む市電の音の上往く秋燕」   
33.投網打つ漁師の影や燕去る   風神  →投網打つ漁師眼下の帰燕かな   
34.燕去る破れし恋の雲深く    穣一  →「燕去る破れし恋の雲の果て」
35.食堂を去る夕焼けに去る燕   リタイア→「食堂を出れば夕焼け去る燕」
36.長崎の被爆を語る秋つばめ   さかえ →秋燕に被爆を語らせるのはちょっと無理があります。
37.またひとつ別れがありて秋燕  せつこ →「我に一つ別れありけり秋燕」
38.燕去る離島留学せし少年    杏だんて→「燕去る離島留学終えし子と」ではどうでしょうか?
39.雲の間に忽ち消える秋燕    6105→平板「秋燕雲の間に間に忽ちに」
40.秋燕余多の餌を食べて発つ   6105→余り詩的ではないように思います。
41.秋燕飛び交う軒の古巣にも   6105→もう一歩です。
42.燕去る祖国の土の産土に    悠太  →「産土に燕去る」ですか? 「帰る」ではないでしょうか?
43.デラシネの残る燕となりにけり 悠太  →「残る燕似たもの我もデラシネと」
44.届かぬ手帰燕を仰ぐ愛猫よ   萌   →「帰燕仰ぐ愛猫遠き眼差しで」  
45.去ぬ燕鳥よけ針を打つ店舗   桉音  →去ぬ燕に鳥よけ針は不要なのではないでしょうか?
46.河原に残る燕と去る燕     ひろあ →季語を二つ出すと焦点がぼけます。
47.いつまでも帰る燕の電線に   ひろあ →この燕は残るのと帰るののどちらを詠んでいるか不明確です。

(入選)
1.また一軒閉ぢし豆腐屋秋つばめ ゆき →秋燕と閉じる豆腐屋の話し方が絶妙でした。
2.興行の一座帰りぬ秋燕     ゆき →燕を旅役者に重ねていて良いと思います。
3.燦燦と端山の落暉去ぬ燕    みさ →まずまずの出来でした。
4.愛憎も好きも嫌ひもなく帰燕  凡愚痴歌→慌ただしさ、何が何やら感が出ています。
5.朝の日に眼凝らせば去ぬ燕   みぃすてぃ→いささか平板でしたがいただきました。
6.都心越え帰る燕の真南ヘ    しーしー→経路を詠んだところが新鮮でした。
7.子午線に添ふて南へ去る燕   光雲2  →これも経路を詠んでいて季語が動きません。
8.人づての母の暮しや燕帰る   荒 一葉→母親とは疎遠なのでしょうか。ドラマを感じました。
9.干拓地の空整へて燕去る    いつせ →美しい隊列なのでしょう。
10.燕帰るもぬけの殻の空の黙   萌   →空の黙で哀愁が出ました。
11.秋燕や故国へ帰る宣教師   俳徊人 →宣教師との取り合わせでむしろ燕が生きました。
12.予報士も残る燕を引き合いに  川端  →気象予報の説明に出て来たようです。
13.どの風を選びて帰る燕かな   風神  →上空を流れる様々な風を引き合いに出しました。
14.夕日あび黒き曲線秋燕   穣一  →叙景ですが、形容詞のみで寂しさを出しています。
15.燕去る異常気象の島後に   穣一  →現在の異常気象の日本であれば戻らなくても良いのではと思っています。
16.GOOD BYが似合う夕暮れ秋燕   影法師 →いささか季語が動く句ではあります。
17.境目と呼ばれしこの地燕帰る  せつこ →燕が飛来する北限の地なのでしょうか。
18.閉校の校舎の空を秋燕     杏だんて→寂しさが増すと詠んでいます。
19.出棺の長きホーンや秋燕    悠太  →音で寂しさを出しました。
20.明日からは雨の来るらし秋燕  桉音  →秋燕の時期は身の回りも、気象も変わり目であると詠んでいます。
21.病室の窓より眺む帰燕かな   ひろあ →愛惜が増す句です。

(秀逸)
1.露地に風揺るる暖簾や燕去る  郁文 
  →路地で揺れる暖簾を揺らしているのは秋風でしょう。季節が変わり燕が返る頃になったことを路地裏の寂しげな揺れる暖簾で表現しました。良い取り合わせであると思いました。

2.燕帰る南の海の色の空     太朗 
  →作者は燕が帰って行く南方の海を思っています。そういえば、この空の色は燕が帰る南の島の海の色のようだと色を重ねている句です。

3.病床の鉛筆画集秋燕      コタロー
  →作者またはこの句の主人公は病で伏せながらも我が家に飛来した燕を細い鉛筆で描いていたのでしょう。その絵の対象となった燕はもういないと、自分が描いた絵の燕をみながら思っています。このお膳立ては上手いと思いました。

4.浦上の聖鐘燕帰る日も     さかえ 
  同じさかえさんが長崎の被爆を燕に語らせている句がありました。それは流石に無理がありましたが、こちらは浦上天主堂の鐘の音を出して不易と流行として対称させています。

5.大好きと言えばよかった燕去る せつこ 
  →「大好きと言えばよかった」は恋愛における後悔です。一方「燕去る」も、まだいるうちにしっかりと見ておけば良かったという後悔でもあります。この句は季語が動くという批判もあるとは思いますが、二つの後悔をぶつけ合ったことで成功した句になっています。

6.病窓を見やる不治の子燕去る  桉音  
  →これは一つのドラマになる句です。不治の病の子にいとって来年という時間がないのかも知れません。それだけに帰る燕は今生の別れとなるかも知れません。そんな切なさを感じさせる帰る燕の句です。


以上で74句の講評を終えます。
新たな兼題はまた後程、


記事No 削除キー

- KENT & MakiMaki -